デンタルオフィスみなと 公式ブログ

静岡県沼津市の歯科医院「デンタルオフィスみなと」です。

【日常】デンタルオフィスみなとが開院16周年を迎えました

本日、デンタルオフィスみなとが開院16周年を迎えました。
これも皆さまのご厚情の賜物と心からお礼を申し上げます。
スタッフ一同、皆さまのお口の健康のために全力を尽くす所存でございます。
今後ともご指導、ご鞭撻の程、お願い申し上げます。

沼津ふるさとの街2024 https://youtu.be/4REyakUJVG0

【リコールはがき新デザイン】ミツバチさんとアオムシさん

当院のオリジナルキャラの「ミツバチさんとアオムシさん」です。

リコールはがきにこの2人の新しいデザインのものが加わりました。

ミツバチさんとアオムシさんの友情と冒険をYouTube動画でお楽しみください。

https://youtu.be/8M6tMKVSFsc

 

【書籍】株式会社パレード社から「トップの言葉」が刊行されました。

2024年5月31日に株式会社パレード社から「トップの言葉」が刊行されました。

p44-p49、当院の記事の部分の抜粋です。デンタルオフィスみなと院長の露木良治の言葉が「一歯入魂」として紹介されています。

トップの言葉

株式会社パレード 2024年5月31日発刊

 

露木 良治 医療法人社団みなと会 デンタルオフィスみなと 院長

 

【PROFILE】

露木 良治(つゆき よしはる)

1964年静岡県生まれ。明治大学を卒業し金融機関に勤務した後、歯科医師を目指す。松本歯科大学を卒業後、横浜市立大学大学院で口腔外科を学ぶ。勤務医を経て、2008年6月、沼津市内に歯科・小児歯科・歯科口腔外科の診療を行う『デンタルオフィスみなと』開院。学生時代からギター、ベース、ドラムを演奏し、歯科医院経営の傍ら、音楽活動を続けている。

 

【INFORMATION】

医療法人社団みなと会 デンタルオフィスみなと

〒410-0004 静岡県沼津市本田町5-17

TEL 055-926-8241

http://dentoffice-minato.com/

 

座右の銘

一歯入魂

 

「港」のように人が集まる「共感の医療」を目指して開院

 

2008年に開院した『デンタルオフィスみなと』のモットーは、「共感の医療」と「顔の見える医療」です。私は初診の患者さんが来られた時は、まず名刺をお渡しすることから始めます。社会人として当たり前のことなのですが、医療の世界はそうではありません。ご自身の名前を名乗らない医師、患者さんに詳しい診療情報を提供しない医師……。民間企業の常識とは違う医療の現場に戸惑いました。

そのような違和感を長く感じてきた経験もあり、当院は「港のように人が集まってくれるところにしたい」との想いから『みなと』と名付けました。私が生まれ育った沼津、口腔外科を学んだ横浜の地に共通する「港」にも由来するネーミングです。

そして「当院は、医療という海を航海するための海図を提供し、スタッフ全員が羅針盤となり、治療と予防を行い、より健康な人生、そしてより良い人生を送るための港として、社会に貢献することを使命とする」との理念を掲げて日々活動しています。

 

〝患者さんのバックグランド〟を知ることが、良い治療につながる

 

私は「患者さんの話をよく聞く」ことを重視し、スタッフにも「時間があれば、患者さんと雑談しなさい」と言っています。例えば、身近な方が亡くなったりすると通夜や葬式などの対応に追われ、歯磨きが疎かになりがちです。また嫌なことが続くと抵抗力が落ちて、歯茎が炎症を起こしやすくなります。ライフイベントと歯の疾患は密接に関係しているのです。そこで当院では、患者さんとの雑談の内容を「デンタルケア記録」に残しています。カルテとは別に、スタッフが患者さんの情報を何でも自由に書き込むために作りました。就職、転職、結婚、お子さんができた……など、患者さんのバックグランドを知らないと良い治療はできません。実際、建築現場で働いている方に「昼休みに歯磨きをしてください」と言っても難しい。そのような現状を把握すると、シリコンの折り畳み式コップを差し上げて「ペットボトルの水で磨いてください」などと助言したりするのです。

私自身は外出先の駅やショッピングセンターのトイレなどで歯磨きを行いますが、これは他の方々には結構ハードルが高いようです。衛生面のことから考えても、今後はトイレの隣に「歯磨きステーション」のような施設が設置されるべきだと考えています。また被災地の避難所では歯磨きが疎かになり、誤嚥性肺炎を引き起こして亡くなる高齢者の方々も少なくないようです。そんな災害関連死を起こさないために、避難所におけるトイレと風呂の設置に加えて、歯磨き場の設置も重要事項だと考えています。

歯の治療は都市計画と同じく「グランドデザイン」が不可欠

 

当院は客船の客室をイメージしています。駐車場からは車椅子対応のスロープがあり、院内は土足で、すべての場所が車椅子とベビーカーに対応したバリアフリー環境です。診療室はプライバシーを重視し、院内の動線分離に配慮した半個室のレイアウトは2014年に「病院用診療室」特許5538345号を取得するなど、幅広い患者さんが利用できるようになっています。また展示スペースを設け、柳原良平さんや手塚治虫さんなどの本物の絵を飾ったり、BOSEスピーカーから流れる音響でのリラックス空間づくりにも注力しています。絵と音楽は、多分に私の趣味による部分も大きいのですが。お陰様で、長いお付き合いの患者さんも増えています。その中には「大きな手術をするので、こちらに来院することができないかもしれない」とお別れの挨拶に来てくださった方もいます。幸い、その患者さんは手術後も当院に通っておられます。また「舌がんになったが、手術を受けたくない」と言われ、がんセンターに時々通われながら当院でできる範囲の緩和ケアで最期を迎えられた患者さんもいらっしゃいました。開業してターミナルケアをするとは想像もしていなかったのですが、それくらい信頼していただけたことに心から感謝しております。

そして、私は常々「グランドデザイン」の重要性を語っています。例えば、患者さんの残っている歯で最善の噛み合わせをつくるためには、一本ずつ診ていたのでは無理です。「上と下の歯、右と左の歯で、どうしたら噛むことができるか」などのイメージトレーニングが不可欠なのです。これは建築家が、何もない土地に「都市」をつくることと似ています。実は横浜にいた頃に『みなとみらい』の都市開発を目の当たりにしたことが、治療のゴールとも言えるグランドデザインの発想につながりました。

先日、ある特許申請を行いました。前述のように一本ずつだけを診て治療すると、弱い歯が次々と駄目になります。まず奥歯が弱ることが多く、奥歯がなくなった後、残った前歯同士で噛むようにする方法に着目しました。つまり「前歯の臼歯(きゅうし)化」です。簡単に言えば、一本ずつだと弱い前歯を連結して補強すると同時に、前歯の裏側に奥歯のような突起をつけるのです。この方法により、前歯だけでしっかりと噛めて、折れたりすることも防げます。ある意味で、革命だと自負しています。特許申請したのは、広く公開することで、多くの歯科医師にこの方法の存在を知ってもらうことが目的です。

 

10年後の人生をデザインし、レンガを一個ずつ積み上げよう!

 

2022年10月には『医療法人社団みなと会』を設立しました。医療法人は非営利であり、社会貢献のためのものだと思っています。「人は世の中を良くするために生きている」というのが私の考えで、その実現を目指して今後も歩んでいきます。

経営者としては、スタッフが働きやすい環境を整えることも使命です。これまで十一人の歯科医師を育ててきましたが、若い方々のためのスキルアップの機会を多数設けています。院内研修やマニュアルに沿った指導はもちろん、学会、セミナーへの参加費用の一部負担なども含めて、将来の独立開業も見据えた育成を行っています。逆に、ノルマのようなものは一切ありません。私の志、心意気を感じてもらいたいという想いが強いのです。

医師に限らず若い方々には、「学び」とはレンガを一個ずつ積んでいくようなものだと言いたいですね。都市をつくることも人生設計も同じです。十年後にはこんな建物(人生)ができているというデザインを描き、それに沿ってレンガを積み上げ続けることが大事です。今から積むのと10年後に始めるのでは大きな差が出てしまいます。

ちなみに私は51歳の時に恩師を亡くした際、今までやろうと思いながらできなかったことを全部再開しました。30年以上中断していた音楽もそのひとつで、一年に一曲ずつシングルを出そうと計画して実現してきました。そして今年は還暦記念でライブを計画しています。音楽は趣味の部分ですが、不思議にも仕事でテンションが上がった時に曲ができます。つまり、私の音楽は仕事と別物ではなく、明確につながっているようです。

 

 

【書籍掲載】Mr. Partner社『2024年度版 ブームの最前線』に当院が掲載されました

【書籍掲載】Mr. Partner社『2024年度版 ブームの最前線』に当院が掲載されました。以下、記事の全文です。

患者さんと対等な関係を貫く医療哲学 コミュニケーションを重視する異色の医学博士

 初診の患者さんが来院すると、診察の前にカウンセリング室へ案内し、症状を聞く前に必ず名刺を渡す。それも真正面からではなく90度の角度で。歯科医院ではおそらく例がないこんなプロセスで診療に入る歯科医師がいる。静岡県沼津市で2008年から診療を続ける『デンタルオフィスみなと』の院長・露木良治さん。このプロセスで意図するのは、「医師と患者さんは対等な立場である」との意志表示。露木さんが追求してきた医療哲学の表出だ。

 「診察時に自己紹介をして名刺を渡す医師は少ないので、皆さん、驚いたり、感心したりしてくれます。真正面からではなく90度の角度で患者さんと接するのは、面と向かうとこれから対決しそうな雰囲気になりますから。この動作で緊張がほぐれる効果もあるのではと感じています。加えて、せっかく来ていただくなら私の理念に共感してほしいと思います。それは『技術とコミュニケーションは医療の両輪である』ということです。患者さんとの信頼関係があってこそ初めて技術が活きてくる。どちらかだけでは治療は成り立たないと私は思っています」

 

 露木さんの独自の医療哲学は、その歩みの中で形成されてきたものだ。大学卒業後、金融機関に就職したが、仕事でなかなか成果を上げることができず、社会の役に立っている実感を持てずにいたところ、「自分は手を動かす仕事をして誰かの役に立ちたい」と考えるようになった。こうして3年で仕事を辞め、勉強をし直して松本歯科大学に入り、医療の道に進んだが、金融機関での3年間の社会人経験が人間関係を重視する露木さんの考え方のベースになった。

 「民間企業で社会人としてのマナーや人と接することの大切さを学んだことは大きかったと思っています。その後、医療の世界に入りましたが、そこで違和感を覚えました。医療の世界の当たり前は、民間企業の当たり前とは、何かが異なっているのです。この違和感の原因を考える中で、人は人との関わりの中で成長するものであると強く感じ、人生とは理解者を探し求める旅であると思うようになったのです」

 露木さんは松本歯科大学を卒業後、横浜市立大学大学院医学研究科に進み、7年間口腔外科を学び、2000年には免疫反応を刺激するタンパク質IFN-γ(インターフェロン・ガンマ)を使った神経と免疫に関する研究で博士(医学)の学位を取得した。

 卒業後は横浜市立大学脳血管医療センター歯科や横浜船員保険病院口腔外科、横浜市総合リハビリテーションセンターなどで勤務医として働き、43才の時に『デンタルオフィスみなと』を開院した。『みなと』と命名したのは、海が好きなことに加え、「港のように人が集まってくれるところにしたい」との思いからだ。海と港とは医院の理念のモチーフにもなっている。

 「当院は、医療という海を航海するための海図を提供し、スタッフ全員が羅針盤となり、治療と予防を行い、より健康な人生、そしてより良い人生を送るための港として、社会に貢献することを使命とする」

 もう一つ、露木さんは医院のモットーとして、「共感の医療」と「顔の見える医療」を掲げた。

 「歯科医院は積極的に行きたいと思う人が少ない場所だと思います。心配や不安や痛みを抱えて、患者さんはやっとの思いで来院されます。『歯の治療が怖くて、どの歯科医院を受診して良いのか分からず、何年も痛いのを我慢した』と話される方もいらっしゃいます。だからこそ、当院を選んで来てくださった患者さんの気持ちを大切にし、誠心誠意向き合う『共感の医療』が大事なのではないかと考えています。患者さんには治療方針や理念に共感した理解者になってほしいですし、そのためには自分が患者さんを理解する必要があると思っています。患者さんの話を否定しないで傾聴することが、その第一歩であると私は考えています」

 

 診療科目は、歯科・小児歯科・歯科口腔外科。現在、スタッフは歯科医師3人、歯科衛生士3人、歯科助手3人である。客船の船室をイメージした院内は、どんな患者さんも安心して通えるようにバリアフリー化され、床には膝に衝撃が伝わりにくいクッション性と耐薬品性のある素材を使用。治療室は別にカウンセリング室も用意した。院内は動線分離に配慮した半個室のレイアウトであり、これは2014年に「病院用診療室」特許5538345号を取得している。また、デジタルX線や歯科用CTなどの最新の医療機器も設置し、滅菌消毒もヨーロッパの厳しい基準に合致した最高レベルのものだ。

 「歯の治療は、初診時に患者さんのX線写真とお口の中を診て、患者さんのお口の中をどのようなものにすればその患者さんにとってベストなのかを考えて治療計画を立てます。それに基づいて1本ずつ歯を治していきますが、最終的な状態が歯科医師だけでなくスタッフ全員の頭に浮かばないと治療になりません。建築家が都市計画に携わるのと同じで、グランドデザインがないとできないのです。この治療のゴールともいえるグランドデザインを患者さんに理解してもらうことが回数をかけて行う歯科治療の前提であり、そこでは患者さんに対して簡潔で明快な説明をすることが求められます。スタッフには仕事を離れたオフの時にイメージトレーニングを行う時間を作るようにと常々言っています。そして、患者さんを家族や恋人だと思って治療をするようにと、言い続けています」

 

 松本歯科大学口腔外科で非常勤講師を務める露木さんは、医院での人材育成にも力を入れ、これまでに臨床研修を終えたばかりの歯科医師11人を1人前に育てた実績がある。また歯科医師募集に特化したサイトも開設して、一緒に働いてくれる歯科医師を募集している。

 「当院は、スキルアップの機会を多数設けています。院内研修やマニュアルに沿った指導を行うほか、学会やセミナーの参加費用の一部を負担します。知識の習得はもちろん、独立開業への足がかりにもなります。また、当院にはノルマが一切ありません。それは院長が民間企業で苦い経験をしたからです。そして、在籍する歯科医師は患者さん一人ひとりにあった治療を提案しています。患者さんに寄り添った治療をしたいという歯科医師には最適な環境です。経験が浅くても、確実に一人前に育てます。独立支援制度もあり、理想のキャリアへのステップアップが可能になります」

 

 露木さんは2022年10月、「医療法人社団みなと会」を設立し、医院を法人化した。その目的に露木さんの思いが凝縮されている。

 「私は、『人は何のために生きているのか』をずっと考えてきました。人が私利私欲のために生きれば、世界は破滅します。人は世の中を良くするために生きているのだと思います。日本人が長い歴史の中で今日まで伝えてきた誠実さ、謙虚さ、他人や自然を思いやる気持ち、そこに何か答えがあるように思います。これこそがこれまで私が考えてきた『共感の医療』なのではと、自身の疑問にようやく答が見えてきたように感じています。そして、これを世界に広げるプラットフォームとして、『医療法人社団みなと会』を設立しました。医療法人ですので、営利を主な目的とする法人ではありません。私の人生後半の目的は社会貢献であり、私の志を継いでくれる歯科医師やスタッフを育てて、私がこれまで社会から受けた知識や経験を社会に還元することだと思っています」

 独自の医療哲学で診療に臨む露木さんの座右の銘は「人間は他者のために生きることこそが幸せ」と「一歯入魂」だ。

 

【歯科医療】かかりつけ歯科 どう選ぶ?

静岡新聞の2024年1月16日号に私の記事「かかりつけ歯科 どう選ぶ?」が掲載されました。

[質問]

40代女性。歯科医院に定期的に通いたいのですが、どこをかかりつけにすればいいのか、困っています。自分にあった医院を見つけるためのポイントを教えてください。

[回答]

むし歯ができた、歯ぐきが腫れた、歯石を取ってほしい、入れ歯を作りたいなど、歯科医院を受診する理由は、人それぞれです。そんな中で、あなたに合った歯科医院とは、どのような歯科医院でしょうか。

歯の治療にはある程度の回数や期間が必要な場合が多いです。まずはあまり遠くない歯科医院を選ぶことが必要でしょう。実際に受診してみないとその医院の雰囲気が分からないということもありますので、まず、1回目では治療ではなく、歯科健診で申し込んで受診してみてはいかがでしょうか。治療が必要な歯があれば、治療計画を立ててもらい、それから治療を受けることで患者さんの不安は解消されると思います。

歯科医院を選ぶポイントは、わかりやすく良い説明をする、じっくりと話を聴いてくれる、患者さんの質問を歓迎する、治療計画を示す、歯を守る姿勢がある、治療は患者さんと相談して決めていく、かみ合わせに気をつかう、歯みがきに熱心、定期健診を欠かさない、全身の健康を気にかけてくれる、スタッフが生き生きと働いている、人格的に信頼できる―などです。

歯科医院は、悪くなった歯を直すだけの所ではなく、歯科医師と患者さんとが二人三脚でお口の健康を守っていく所です。患者さんの側も「痛くなったので歯科医院に行く」のではなくて、「お口の健康を保ために定期的に歯科医院を受診する」という意識を持つことが必要です。

痛くない時にでも行こうと思える歯科医院、またそれに応えてくれる歯科医院が、あなたにとってかかりつけ歯科だと思います。

【社会・医療】ストレスと人間社会

 ハムスターは回し車で1日にかなりの距離を走る。その回し車を人間が手を加えて、時々逆回転にしたり、動きを悪くしたりする実験では、ハムスターが走る距離は、1/4になるという結果になった。

 哺乳類であるマウスとヒトとは、遺伝子の上では99%は同じ遺伝子であり、かなり近い存在である。それ故、ヒトは「しっぽがないマウス」と呼ばれる。ヒト以外の他の動物がどの程度の感情を持つか、正確には知ることができないが、他の動物が本能で行動している場合の判断の基準は主として、「快」or「不快」であると考えられる。

 ハムスターが回し車を1日にハーフマラソンほど走らせるのは、食べ物を探し求めての行動とされている。したがって、餌が少ない時には多い時よりも、多く回し車を回すことが知られている。しかし、餌がたくさんある時にも、ハムスターは回し車をせっせと回し続ける。人間にしてみたら、無意味な行動に見えるかもしれないが、ハムスターにとって、本能のままに走り、回し続けることが「快」なのであろう。ゆえにハムスターにとって、回し車がない環境は「不快」であり、ストレスがある環境なのである。

 現代社会は多種多様のストレスに囲まれたストレス社会といわれているが、ストレスがない状態で人が生きられるだろうか。これについて、興味深い実験がある。人間が電気ショックを受けるボタンが置かれた何もない部屋で過ごす実験では、誰もが何もないことに耐えられず、電気ショックのボタンを何度も押したとのことである。

 しかし、刺激を求め続けると依存症を発症することがある。薬物依存症になった人が薬物を探し求める行動は、薬物探索行動と呼ばれている。薬物依存症の人にとっては、薬物が体内にある間が「快」であり、ストレスがない状態であると考えられる。

 過度のストレスは人間の身体に悪影響を与える。強いストレスは、自律神経系を乱し、免疫抑制状態を生じる。副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることで感染症にかかりやすくなったりする。

 ストレスに立ち向かうことは必要だが、適度な回避(ストレス・コーピング)もまた必要である。ライフイベントとストレス度については、Holmesらによるストレス尺度がよく知られている(Holmes & Rahe, 1967)。研究の結果、1年間に経験したイベントの合計点が300点を越えた人の79%が、翌年に何らかの疾患を訴えていた。

 ストレスを克服し、心身ともに健康な生活を送るためには、ワークライフバランスが大切であり、勤め人が自分らしさを回復するためには11時間が必要とされている。余暇を有効に過ごすことで、「自分らしさ」のある意義ある人生になることは、言うまでもない。

 ヒトを除く動物は、生殖を終えると命が尽きるものが多いが、ヒトはそうではない。人間の寿命は、社会や文化を構築するために与えられたものだと私は思う。

 ヒトの特徴は、直立二足歩行を始めたことに大きく由来する。樹上生活から草原で生活することができるようになり、行動範囲を大きく広げた。アフリカで誕生したとされる現代のヒトは、温暖な地域から寒冷な地域へヒトは生活範囲を広げることで、今では地球のあらゆる場所でヒトが生息しているようになった。これによって遠くにいる仲間を見つける必要が生じたものと考えられる。その結果、視力が他の動物よりも発達し、100m先にいるものもが、動物かヒトか、敵か味方か、老若男女か、瞬時に見分けることができるような能力を備えるようになったと考えられている。

 視力が発達し、文字や言語を作り、文明・文化を発達させてきた人間であるが、近年、デジタル化の情報革命が急速に進んでいる。発展途上国においての研究では、ネットの普及とともに、少子化が加速するというネット社会の負の側面が明らかになってきた。これは、ヒトの情報のおよそ80%が視覚に依存していることが大きいと思われる。音楽がレコードからCDに変わり、さらにはネット配信へと移行したように、文字が手書きから印刷物になり、ネット上の文字情報へと形を変えたように、今後はあらゆるものが動画に集約されていくように私は思う。

 ネットにはあらゆる情報があふれており、簡単に情報を得ることができる。ネットを検索すれば、誰もが分かったような気になるが、世の中、そう簡単なものばかりだけではなく、実際に見たり、触れたり、体験したり、経験しないと得られないことが多々ある。外科手術や歯科治療の技術などは、その最たるものであろう。

 人類の歴史は、不可能なことを可能にしてきた歴史であると言っても良いだろう。しかし、その影には技術の犠牲になった多くの命があることを忘れてはいけない。恐ろしいことに、現代技術の多くは、第一次~第二次大戦中にその萌芽があったものである。毒ガスは抗がん剤を生み、ダイナマイトは爆弾となり、他にも戦車、潜水艦、飛行機、ロケット、コンピューターなど、例を挙げればきりがない。囚人の管理に必要な台帳からコンピューターのパンチカードが生まれ、また、砲撃の弾道計算用に必要とされた機械はコンピューターの原型となった。人類の歴史は、大量殺戮の歴史であるとも言える。

 病によって、人は臓器を失い、自らを失うことがある。それは多くの人にとっては、恐怖であり、最終的には人は死の恐怖に対処しなければならない。医療では、大切なものを失う現場に立ち会う場面に遭遇する。それに寄り添うのがケアであり、回復させようとするのが治療である。医療スタッフは、患者さんが安心できる手助けをしなければならない。安心して医療を受けることができる上で必要なことは信頼関係を築くことであり、そこには医療技術とコミュニケーションの両輪が必要である。そのために、「共感の医療」「顔の見える医療」を念頭に置いて、日々診療する必要があると私は考える。

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【日常】成人の集い 挨拶~学問とはレンガを積むようなもの~

私の子どもが成人式を迎えることができました。私は子どもの学校で保護者会会長を務めました。そのご縁で、子どもの学校独自の成人式で御挨拶をさせていただきました。式や学校の名称など、一部改変してあることをご了承ください。

 

成人の集い 挨拶

 

 僭越ではございますが、ご指名にあずかりましたので、保護者を代表いたしまして、お祝いの御挨拶をさせていただきます。

 まずは元旦の能登半島地震で被害に遭われた方には、心よりお見舞い申し上げます。

 さて、皆さんが○○高等学校を卒業されてから、早いもので2年がたちました。ここにこうして成人の集いを迎えることができました皆さん、おめでとうございます。また、保護者の皆様には、この佳き日を迎えられましたことを、心よりお祝い申し上げます。そして、企画してくださった保護者の方と元委員の方には、お忙しい中、ご準備をしていただきまして、このような盛大な成人の集いを挙行していただきましたことに、心より感謝申し上げます。

 皆さんは○○高校を卒業された後、大きな希望を胸にそれぞれの道に進み、その不断の努力の中で、見違えるほど大きく立派に成長され、本日、無事に成人の集いを迎えられることに、保護者の皆様とともに、大きな喜びを感じています。

 新成人となられた皆さんに、私からメッセージ2つを贈りたいと思います。1つ目は、「人生の哲学」つまり何のために生きているのかを問い続けてほしいということです。

 人が私利私欲のために生きれば、世界は破滅します。日本人が長い歴史の中で伝えてきた、誠実さ、謙虚さ、他人や自然を想う気持ち、そこに何か答えがあるのでは、と私は思います。「人は世の中を良くするために生きている」のだと私は○○学校での6年間の中で自然と思うようになりました。

 正解はどこにもありません。皆さん一人ひとりが問いかけを続けながら、これからの人生を歩んで行って欲しいと思っております。

 もう一つ話をさせていただきます。皆さんが中学1年生だった時、私が総合講義で話をさせていただきました中で、「学問とは一つずつレンガを積んでいくようなもの」という話をさせていただきましたことを、覚えていらっしゃるでしょうか。今日はその続きをさせていただきます。自らの夢を実現させるためには、レンガを積んで建物を作っていく作業と同じく、長い時間と絶え間ない努力が必要です。それは気が遠くなるようなものですが、強い願いや希望を最終的な完成イメージとして思い描けば、それに向かって進んで行くことができます。これは何もない空き地に都市を造るグランドデザインを描くことと同じだと思います。自分が今、どの位置のレンガを積んでいるのか、この向きで良いのか、この大きさで良いのか、を常に考えてレンガを積んでください。私は皆さんが積んだレンガが10年後、20年後にどうなっているか、見せてもらえることを楽しみに待っています。

 人生は順風満帆な時ばかりではありません。時には荒波にもまれることもあると思います。どのような困難に直面しても、他を思いやる心を忘れずに、自分ができる最善を尽くすことで、道は拓けるものと思います。受け継がれた本学のスピリットを心にとどめて、未来を切り開いてください。

 ○○学校在学中には、教職員の皆様が、生徒たち一人ひとりを温かく見守り、時に優しく、時に厳しくご指導いただきました。今、振り返ってみますと、大きな愛に包まれていた6年間であったことを改めて感じます。世界中のどこに行っても恥ずかしくない知性と精神を育ててくださった○○学校に、保護者を代表いたしまして、心より感謝申し上げます。

 最後になりましたが、皆さんの輝かしい未来と、ご臨席の皆様のご健勝、そして○○学校のますますのご発展をお祈り申し上げまして、お祝いの言葉とさせていただきます。

                          令和6年1月6日

                          保護者代表 露木良治