デンタルオフィスみなと 公式ブログ

静岡県沼津市の歯科医院「デンタルオフィスみなと」です。

【書籍掲載】Mr. Partner社『2024年度版 ブームの最前線』に当院が掲載されました

【書籍掲載】Mr. Partner社『2024年度版 ブームの最前線』に当院が掲載されました。以下、記事の全文です。

患者さんと対等な関係を貫く医療哲学 コミュニケーションを重視する異色の医学博士

 初診の患者さんが来院すると、診察の前にカウンセリング室へ案内し、症状を聞く前に必ず名刺を渡す。それも真正面からではなく90度の角度で。歯科医院ではおそらく例がないこんなプロセスで診療に入る歯科医師がいる。静岡県沼津市で2008年から診療を続ける『デンタルオフィスみなと』の院長・露木良治さん。このプロセスで意図するのは、「医師と患者さんは対等な立場である」との意志表示。露木さんが追求してきた医療哲学の表出だ。

 「診察時に自己紹介をして名刺を渡す医師は少ないので、皆さん、驚いたり、感心したりしてくれます。真正面からではなく90度の角度で患者さんと接するのは、面と向かうとこれから対決しそうな雰囲気になりますから。この動作で緊張がほぐれる効果もあるのではと感じています。加えて、せっかく来ていただくなら私の理念に共感してほしいと思います。それは『技術とコミュニケーションは医療の両輪である』ということです。患者さんとの信頼関係があってこそ初めて技術が活きてくる。どちらかだけでは治療は成り立たないと私は思っています」

 

 露木さんの独自の医療哲学は、その歩みの中で形成されてきたものだ。大学卒業後、金融機関に就職したが、仕事でなかなか成果を上げることができず、社会の役に立っている実感を持てずにいたところ、「自分は手を動かす仕事をして誰かの役に立ちたい」と考えるようになった。こうして3年で仕事を辞め、勉強をし直して松本歯科大学に入り、医療の道に進んだが、金融機関での3年間の社会人経験が人間関係を重視する露木さんの考え方のベースになった。

 「民間企業で社会人としてのマナーや人と接することの大切さを学んだことは大きかったと思っています。その後、医療の世界に入りましたが、そこで違和感を覚えました。医療の世界の当たり前は、民間企業の当たり前とは、何かが異なっているのです。この違和感の原因を考える中で、人は人との関わりの中で成長するものであると強く感じ、人生とは理解者を探し求める旅であると思うようになったのです」

 露木さんは松本歯科大学を卒業後、横浜市立大学大学院医学研究科に進み、7年間口腔外科を学び、2000年には免疫反応を刺激するタンパク質IFN-γ(インターフェロン・ガンマ)を使った神経と免疫に関する研究で博士(医学)の学位を取得した。

 卒業後は横浜市立大学脳血管医療センター歯科や横浜船員保険病院口腔外科、横浜市総合リハビリテーションセンターなどで勤務医として働き、43才の時に『デンタルオフィスみなと』を開院した。『みなと』と命名したのは、海が好きなことに加え、「港のように人が集まってくれるところにしたい」との思いからだ。海と港とは医院の理念のモチーフにもなっている。

 「当院は、医療という海を航海するための海図を提供し、スタッフ全員が羅針盤となり、治療と予防を行い、より健康な人生、そしてより良い人生を送るための港として、社会に貢献することを使命とする」

 もう一つ、露木さんは医院のモットーとして、「共感の医療」と「顔の見える医療」を掲げた。

 「歯科医院は積極的に行きたいと思う人が少ない場所だと思います。心配や不安や痛みを抱えて、患者さんはやっとの思いで来院されます。『歯の治療が怖くて、どの歯科医院を受診して良いのか分からず、何年も痛いのを我慢した』と話される方もいらっしゃいます。だからこそ、当院を選んで来てくださった患者さんの気持ちを大切にし、誠心誠意向き合う『共感の医療』が大事なのではないかと考えています。患者さんには治療方針や理念に共感した理解者になってほしいですし、そのためには自分が患者さんを理解する必要があると思っています。患者さんの話を否定しないで傾聴することが、その第一歩であると私は考えています」

 

 診療科目は、歯科・小児歯科・歯科口腔外科。現在、スタッフは歯科医師3人、歯科衛生士3人、歯科助手3人である。客船の船室をイメージした院内は、どんな患者さんも安心して通えるようにバリアフリー化され、床には膝に衝撃が伝わりにくいクッション性と耐薬品性のある素材を使用。治療室は別にカウンセリング室も用意した。院内は動線分離に配慮した半個室のレイアウトであり、これは2014年に「病院用診療室」特許5538345号を取得している。また、デジタルX線や歯科用CTなどの最新の医療機器も設置し、滅菌消毒もヨーロッパの厳しい基準に合致した最高レベルのものだ。

 「歯の治療は、初診時に患者さんのX線写真とお口の中を診て、患者さんのお口の中をどのようなものにすればその患者さんにとってベストなのかを考えて治療計画を立てます。それに基づいて1本ずつ歯を治していきますが、最終的な状態が歯科医師だけでなくスタッフ全員の頭に浮かばないと治療になりません。建築家が都市計画に携わるのと同じで、グランドデザインがないとできないのです。この治療のゴールともいえるグランドデザインを患者さんに理解してもらうことが回数をかけて行う歯科治療の前提であり、そこでは患者さんに対して簡潔で明快な説明をすることが求められます。スタッフには仕事を離れたオフの時にイメージトレーニングを行う時間を作るようにと常々言っています。そして、患者さんを家族や恋人だと思って治療をするようにと、言い続けています」

 

 松本歯科大学口腔外科で非常勤講師を務める露木さんは、医院での人材育成にも力を入れ、これまでに臨床研修を終えたばかりの歯科医師11人を1人前に育てた実績がある。また歯科医師募集に特化したサイトも開設して、一緒に働いてくれる歯科医師を募集している。

 「当院は、スキルアップの機会を多数設けています。院内研修やマニュアルに沿った指導を行うほか、学会やセミナーの参加費用の一部を負担します。知識の習得はもちろん、独立開業への足がかりにもなります。また、当院にはノルマが一切ありません。それは院長が民間企業で苦い経験をしたからです。そして、在籍する歯科医師は患者さん一人ひとりにあった治療を提案しています。患者さんに寄り添った治療をしたいという歯科医師には最適な環境です。経験が浅くても、確実に一人前に育てます。独立支援制度もあり、理想のキャリアへのステップアップが可能になります」

 

 露木さんは2022年10月、「医療法人社団みなと会」を設立し、医院を法人化した。その目的に露木さんの思いが凝縮されている。

 「私は、『人は何のために生きているのか』をずっと考えてきました。人が私利私欲のために生きれば、世界は破滅します。人は世の中を良くするために生きているのだと思います。日本人が長い歴史の中で今日まで伝えてきた誠実さ、謙虚さ、他人や自然を思いやる気持ち、そこに何か答えがあるように思います。これこそがこれまで私が考えてきた『共感の医療』なのではと、自身の疑問にようやく答が見えてきたように感じています。そして、これを世界に広げるプラットフォームとして、『医療法人社団みなと会』を設立しました。医療法人ですので、営利を主な目的とする法人ではありません。私の人生後半の目的は社会貢献であり、私の志を継いでくれる歯科医師やスタッフを育てて、私がこれまで社会から受けた知識や経験を社会に還元することだと思っています」

 独自の医療哲学で診療に臨む露木さんの座右の銘は「人間は他者のために生きることこそが幸せ」と「一歯入魂」だ。