デンタルオフィスみなと 公式ブログ

静岡県沼津市の歯科医院「デンタルオフィスみなと」です。

【エッセイ】横浜 2002年7月17日

電車の窓の外を、見慣れたビルのネオンが通り過ぎていった。電車のシートには、乗客はまばらだった。車内に、横浜駅到着を告げるアナウンスが鳴り響いた。電車が徐々にスピードを落とした。電車が止まる直前、窓から駅ビルの建物が見えた。それは電車の窓から見える景色をすべて遮断するかのような巨大な白い壁に見えた。壁の上の方には、駅ビルの名を示すネオンが見えた。一瞬、山手線のどこかの大きな駅に着いたのではないかと目を疑ったが、やはり横浜だった。電車のドアが開いてホームへと降り立った。外はむっとするような温度と湿気だった。これならば、肌寒いくらいに感じる電車の冷房の方がよほどましだった。 

東口のバスターミナルへと向かうため、ホームから階段を降りた。駅の構内には、大きな荷物を持った人たちがあちこちにいた。みな、休日を利用してどこかへ出かけてきたのだろう。改札を抜けて地下通路に出た。昼間は人でごったがえす地下通路も日曜日の夜となるとさすがに人が少ない。見るからに危なそうな人もいない。都内と違って治安も悪くないようだ。ふと気付くと、5m先の柱の陰で抱き合っている若いカップルがいた。彼らを見るつもりはなかったが、二人の脇を通り過ぎる際に、キスをする瞬間が目に入ってしまった。ショートカットの女の子と、その女の子よりも長いくらいの髪の男の子だった。大胆なカップルだなと思いながら、日曜日の夜の別れを惜しんでいるということは分かった。

東京に住んでいたころ、東京に戻ってくるのはとても憂鬱だった。そのころの僕は、大きな駅で乗り換えて、そこからさらに私鉄に乗り換えてアパートがある駅まで30分だった。東京に近づくにつれ、電車の中に人が多くなっていき、電車からみえる景色がごちゃごちゃしてきた。それが理由もなくいやだった。ジーンズしかなかった僕は最初の半年はジーンズだけで過ごした。コンバースのスニーカーは、あっという間に底が磨り減ってしまった。

22:12分発のバスに乗った。最終のひとつ前のバスだった。乗客はみな座席にすわった。桜木町のバスターミナルを経由するのが遠回りに思えるが、台風が去ったあとの梅雨の晴れ間にバスの窓からMM21の観覧車がきれいだった。あらためて横浜にいることを感じた。桜木町~乗客が10人ほど乗ってきた。 

僕はこの街が好きだ。

2002/07/14