【エッセイ】 医療従事者として「演じる」ということ
医療の現場において、医療従事者には「演じる」ことが求められます。これは、患者さんが安心して治療を受けるために医療従事者が果たす役割として、とても重要なことです。
「演じる」ということは、「自分を偽る」ことではないと思います。演じることによって、相手の立場になって考え、行動することによって、患者さんの良き理解者になることができます。
患者さんは、病気についての悩みや苦しみをかかえて、受診されます。患者さんは、痛みや苦しみだけでなく、大切な自分の体の一部を失ったり、心や気持ちに傷を負っていたり、時には死の恐怖にさらされていることもあります。医療従事者は、それに寄り添うことが求められます。
医療従事者として「演じる」上で必要なものには以下の3点があると私は考えます。
1つ目は、医療従事者として、きちんとした接遇を行うことが必要です。これは、医療人としてだけでなく、職業人としての基本的な心がまえです。例えば、前日に何か嫌なことがあって気持ちが沈んでいたとしても、気持ちを切り替えて、患者さんに接するということが求められます。
2つ目は、言うまでもなく、医療に従事する専門職として、時には優しく、時には毅然とした態度で、患者さんを支援することです。
3つ目は、患者さんの身近な人の立場になって、患者さんの気持ちに寄り添うことです。
医療従事者は、患者さんと対等な立場にあることを意識する必要があると思います。また、医療従事者は、患者さんが病の苦しみを乗り越える勇気を持つために必要な「心強い存在」でならなければいけないと思います。これを日々肝に銘じて、私は診療します。
「医者と患者の関係論」