【童話】二人の公園
【童話】二人の公園
町外れの公園では、いつも子供たちが元気に遊んでいました。
みつあき君とよしお君は、とても仲良しのお友達です。
「みつあき君、今日は砂場で遊ぼうか」「うん、砂場でお城を作ろう」
二人は毎日、時間が経つのを忘れて、夕焼けが空を赤く染める頃まで、公園で遊びました。
公園のまわりには、たくさんの家が建ち並んでいました。町にはやがて大きなビルがたくさん作られていきました。ビルにかこまれて、しだいに公園には、夕日が射しこまなくなってきました。
それでも、二人は、いつも仲良く公園で遊びました。
二人はもうすぐ中学生になろうとしていました。そんなある日のことです。
公園で遊ぶみつあき君には元気がありませんでした。
「みつあき君、どうしたの?心配なことがあったら、僕に言ってね。僕たちは友達じゃないか」
「実は、よしお君、僕はお父さんの仕事で引っ越すことになってしまったよ。同じ中学に行けると思っていたのに残念だよ。よしお君とずっと一緒に居たいよ」
みつあき君の目からには涙があふれていました。
よしお君も涙が出てきましたが、みつあき君には涙を見せないようにと後ろを向いて、言いました。
「いつまでも、僕たちは友達だよ。大人になったら、ここに戻ってきて、また遊べばいいじゃないか!」
そうは言ってみたものの、よしお君の目から涙があふれてきました。二人は向き合って、互いの手を握り締めて、「またここで会おうね。約束だよ」とどちらからともなく言いました。
数日後、みつあき君の家族を乗せたトラックは、遠い町へと向かって走り出しました。
よしお君は、一人で公園に行ってみました。そこには、たくさんの子供たちが遊んでいました。背中から「よしお君!」とよぶ声が聞こえました。「え!みつあき君!」と振り返ると別のお友達でした。「みつあき君がいるわけないか…。ねえ、何して遊ぶ?」
よしお君は、やがて別のお友達と遊ぶようになりました。
よしお君が大きくなるにつれて、町には大きな建物ができて、やがて公園だったところも大きなビルになりました。大人になったよしお君は、そのビルの前を通るたびに、公園のことと、一緒に遊んだみつあき君のことを、「みつあき君は、どうしているのかな」と思いだしました。
そんなある日のこと。よしお君の家に郵便が届いていました。見たことがない切手が貼ってあります。外国から届いた手紙のようです。差出人は、みつあき君でした。
「みつあき君からの手紙だ!」
よしお君は、急いで封筒を開けました。そこには、なつかしいみつあき君の字が並んでいました。
「よしお君、元気ですか。あれからずいぶんの年月が経ちました。僕は、海外青年協力隊でアフリカにいます。アフリカの村で、学校と公園を作りました。これが写真です。」
封筒の中には、新しい学校と大人になって見違えるほど日焼けしてたくましくなったみつあき君が写っていました。もう一枚の写真は、公園が写っていました。丸太を組み合わせた遊具があるだけの公園ですが、たくさんの現地の子供たちが楽しそうに遊んでいました。
「僕はまだ、当分、ここで仕事をするよ。子供の頃、二人で遊んだ公園を覚えているかい?現地の人が僕に公園の名前をつけてほしいというから、『二人の公園』という名前をつけたんだ」
よしお君は、懐かしくて、手紙を何度も読み返しました。そして、「よし、今度長い休みの時に、みつあき君に会いに行こう」と思い、地球儀を見ました。地球儀の裏側に、子供の頃のみつあき君の笑顔が重なって見えました。
おしまい。
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